イチロー選手の選球体
去年の年末にNHKのBSで放送していたので見ていた方もおられると思いますが、おとどし262本というメジャーリーグ年間最多安打記録を打ち立てイチロー選手(以下イチローと略す)が、昨年は200本も難しいという状況に追い込まれていました。その1年間を振り返ったドキュメンタリー番組がありました。イチローの昨年の4月の滑り出しは、本人が怖いぐらいと言うぐらい好調でした。ところがいやな予感が的中するように5、6月が大スランプ。この間は本当に苦しかったようです。そして7月に自分の不調の原因を見つける決定的な瞬間が訪れるのです。ボールをよく見ようとしていまうのが問題だったようです。ここからがイチロー独特の感性が光ります。普通ならば打てなかったら、さらにボールを見ようとしますね。イチローはそのボールをよく見ようとするがゆえに始動(右足を上げる動作)が遅れてしまっていることに気がついたのです。よく野球では選球眼というのを言います。イチローの場合「選球体」という造語を使っています。ボールに対してからだが反応するようにしたいという意味がこの言葉に込められています。あまり目に頼って見ようとしてしまうとからだの動きが悪くなります。このことをアレクサンダー・テクニーク的にもう少し説明するならばよく見ようと意識が強くなるとまず首を固定して固くしてしまうのですね(目と首の筋肉は非常に密接に関係しています)。そうすると頭がうまく背骨に乗せることができなくなり頭と首と背骨との関係が崩れて全身の協調作用が使えなくなってしまうのです。イチロー自身も言っている通りよく見ようとして始動が遅れるからボールに合わせるために腕だけでボールをとらえるようになってしまう。そうするといわゆる手打ちという悪い形になってしまう。つまりイチローらしい全身をうまく使ったバッティングができなくなってしまうのです。ここでもうひとつ興味深いことは、もともとの発端は4月の好調時に起こっていたのではないかと。4月の時点では確かにボールがよく見えていたと思うのです。すんなり自然にできていたことが、ある日を境にできなくなってしまう。自然なことは、スムーズですから、抵抗感がないですね。そこでイチロー自身怖いぐらいというように少し心理的な要素が加わると少しずれてしまうのですね。そうするといろいろ考えてしまうんです。そしてよく見えているがゆえにそれについ頼ってしまう結果となったのでは、これはあくまで私の推測ですが。好事魔多しですかね。イチローという天才であってもそういう落とし穴があるんですね。 一般的なレベルでも例えばパソコンを見つめ続けると肩が凝るのも視点を固定してしまい首を固くしてしまうことが原因です。そして間違ってはいけないという心理的な緊張がそれに拍車をかけます。まあそんな時は休憩するなり、首や肩をゆっくり回すなりすればいいと思います。よく首を勢いよく横に振ってポキポキっと鳴らしている人がいますが、あれは絶対にやらないように注意して下さい。頭の重さを感じながらゆっくりとやさしく回して下さい。


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